Makoto Furukawa
ポッドキャスト感想〜オトマーケ その2
前回に引き続き、日本の音声ビジネス界では第一人者と言えるオトナルの八木タイスケさんの番組「オトマーケ」の感想です。セカイカメラを開発した会社の元CEOで、シリコンバレーで活躍している起業家の井口尊仁さんをゲストに迎えての配信回の中編です。
前編でもお話しされていた、井口さんが開発したオーディオメタバースアプリ、
「Cubemint」のベータ版のお話からスタート。
Cubemintを一言で説明すると「ライブ体験ができる空間型メディア、かつ、没入型の体験を可能にしているアプリ」だそうです。
上記のリンクから辿って、ケータイアプリでその世界を覗いてほしいのですが、まず画面に現れるのはGoogle mapのような現実の地図。そして所々にCubeと呼ばれる四角いモノが描かれっています。その四角いモノがClubhouseの「部屋」やTwitterの「スペース」と同じもので、そこに入ると同室の人々とトークができます。ただ、音声SNSのように「複数人と同時に会話できる」だけではなく、3Dオーディオ空間(左右2個のイヤホンだけで上下・左右・前後を擬似的に再現できる空間)が広がり、まるでその場にいるような音体験ができるというものです。そのCubeについての詳しい説明が井口さんの口から直接語られるのですが、八木さんが難しくなりすぎないようにフォローを入れながら説明してくれます。
ベータ版の段階でのCubeの説明が続きますが、まとめると...
・音声SNSは参加者がネットで繋がったアプリ上に集いますが、CubeはGPSと連動しているので、現実の地図上に集う(ように見える)。
・招待メールをもらうか、地図上からアクセスするかの二通りでいろんなCubeに入れる。
・全ての空間(Cube)はNFT化されているので、Open Sea (有名NFTマーケットサイト)からも入れる。
・誰でもCubeを作れて、売ったり買ったりできる。
・同じ場所に複数のCubeは作れない。ビルのように上下や、アパートの様に左右に並べるのは可能。
というものです。僕も見ることはできましたが、英語がわからないのでCubeの中に参加したり、Cubeを作ったりというアクションはできませんでした。ちなみに四角い空間(Cube)を鋳造(mint)するのでCubemintだそうです。
Cubemintで体験できるものとして、例えば、シアトルのスターバックスにCubeがあるなら、(実際にリアル店と連動していたりすると)そのCubeで交わされる会話にはシアトルならではの話題や街の空気感があり、音楽もシアトルのスタバならではのものがあるはずで、ポリゴンで再現された3D空間の映像を見るよりは没入感が高く、楽しい体験になるのではないか?というお話が語られます。
また、井口さんがCubemintに地図情報を入れた理由は、現実と紐付くことによって、コミュニケーションに文脈やストーリーを与え、より深く記憶に残せるからだそうです。
音声SNSは新しい人間関係だったり、新しい出会いを生むのが得意なので、
それをバーチャルで再現できれば素晴らしいプラットフォームになるに違いないという想いから開発が進められたそうです。
これで思い出したのは榎本 幹朗の著書「未来は音楽が連れてくる Part 2」に出てくる、
Napsterを開発したショーン・ファニングの言葉、
”mp3は感情の塊だ。感情の塊をやりとりするようにすれば、
ネットは全く新しいコミュニティに生まれ変わる”
(榎本 幹朗. 未来は音楽が連れてくる Part 2 スティーブ・ジョブズが世界の音楽産業にもたらしたもの (Japanese Edition) (Kindle の位置No.113-114). Kindle 版. )
というお話。Napsterがアメリカで大ブレイクした理由はタダで音楽が聴けたからですが、意外とNapsterがインターネット世界の理想の場所のように見えたからなのかもしれません。
もともと電話は離れた場所にいる人と会話するために発明されました。その電話回線で離れた場所にあるコンピューターをつなぎ、テキストデータのやりとりする仕組みがインターネットへ発展します。さらに電話回線を使って音楽を聴かせたいというアイデアからmp3が開発され、ファニングのように新しいコミュニティを夢想する若者が現れました。
技術の進化はコミュニケーションの深度を増していきます。
次の舞台はメタバースと呼ばれる3次元仮想空間です。そこは3DCGを活用したヴィジュアルが主軸となる世界です。
しかし、井口さんはそこに異を唱えます。メタバースの本質の一つである「没入感」に有効なのはビジュアルではなく音声だと何度もおっしゃっています。そして井口さんは単純な「音声の可能性」のお話しをしているわけではないことに、聞いている人も薄々気がつき始めるはずです。どうやら井口さんの頭の中を解析すると...
1、現実以上の深いコミュニケーション方法を、インターネットの世界で模索している
2、現実を認知する最終方法が「目で見ること」というのは近代人の錯覚である
と考えているらしいことが伺えます。前編でもお話ししていましたが、コードを書くことに熱中してしまい、映画「マトリックス」のように現実の世界も全てコードに見えたという方なので、常識人には見えないものがきちんと見える人なんだろうと思います。
日常では出会えない「天才」の話を聞けるのもポッドキャストのいい所。ラジオじゃテレビではここまで時間のとってくれません。
そして前編では映画「マトリックス」の世界にいましたが、中編では「ガンダム」の世界にいるのがわかります。Twitterでガンダムのことをたまに呟くオトナルの八木さんが井口さんをゲストに呼ばれたのを理解できました。井口さんが見ている未来は、デジタルで脳の機能を拡張させ、時空を超えた非言語的コミュニケーションを可能にした世界に他なりません。つまり、ニュータイプへの進化です。「人類の革新は宇宙の民たる我々から始まる!立てよ!国民!」というのはギレン総帥の演説の一部ですが、ギレンというか、ジオン・ズム・ダイクンと同じ事を考えている人の声を、生きている間に聴けるとは思いませんでした。
ディスっているわけではなく、人間の感覚の一部が失われた時に、脳の機能が拡張してそれを補うというのは科学的にも証明されています。井口さんは「人類とはこういうものだ」という近代人の間違った自己認識を正し、テクノロジーを使って脳の機能拡張を促し、我々がニュータイプに近づくべく、音声を使ったオーディオメタバースアプリ「Cubemint」という道具を開発したと言っても過言ではありません。(ちょっと過言ですが)
中編でこの情報量ですから、最後、後編はどんなお話が飛び出すのでしょうか?また感想ブログを書いてみたいと思います。最後までお読みいただき、ありがとうございました。感想などお待ちしております。
