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  • 執筆者の写真Makoto Furukawa

ポッドキャスト感想〜オトマーケ その3


全3話の最終回、日本のポッドキャスト界では第一人者と言えるオトナル八木タイスケさんの番組「オトマーケ」の感想です。セカイカメラを開発した会社の元CEOで、シリコンバレーで活躍している起業家の井口尊仁さんをゲストに迎えての配信回です。


井口さんが開発中のオーディオメタバースのアプリ「Cubemint」のお話を中心に、前編では「そもそもメタバースとはどんな世界か?」中編では「メタバースをオーディオで展開するとはどういうことか?」が語られています。

そして最終回では「音声の未来」が語られていますので、その部分を解説していきます。


その前に、井口さんがこのポッドキャストを通してずっと「視覚は、臨場感という意味においても、生活の中にシームレスに拡張現実を接続する意味においても限界がある」とずっとおっしゃていました。それがこの時点(2022年8月16日)で少しずつ認識され始めてきてまして、メタのマーク・ザッカーバーグも「メタバース構想はちょっと時期尚早かったかも」とコメントする状況です。やはり井口さんの先見の明、そしてテクノロジーがどう使われるか予測する能力は正しかったと再認識させられました。


最後のパートは「音声の可能性」というもので、音声好きには興味のある内容です。

一般に、音声コンテンツや音声CMなど声で伝達される情報は

1、発話者の声以外の情報も認知・記憶する(パーソナリティの人柄に共感したり、商品へのイメージ、愛着が深まったりする)

2、聴覚以外の視覚や触覚などを想起させやすい(想像力を刺激する、過去の記憶を、五感も含め脳内で再現する)

3、繰り返し聴くことで記憶に定着しやすい(聴いているつもりがなくても、実は記憶に残っている)

というようなことが挙げられます。

これは音声の特徴というよりは「視覚を奪われた状態における、人の認知の特徴」とも言えます。意味は同じなのですが、喋り手や音声メディアが特殊な力を持っているというより、視覚を奪われた聴き手が、それを補完するために耳の感度を視覚、触覚、臭覚の部分まで広げているという方が正しいかもしれません。

それはこのシリーズでの会話にも出てきた「音声は脳の機能を拡張する」ということに通じるものがあります。

こういった「認知機能が拡張される」という音声の特徴に加えて、「感情の共有」という魅力も語られます。人は社会性の動物で、孤独に居ては幸せ感を感じにくい生き物です。また他人と協力して物事を進めたり、結果を分かち合うことを求める傾向にあります。そこに音声は欠かせません。ツイッターやメールなどの文章も、ある程度限られた文字数では感情は伝えづらく、顔文字が多用されることになりますが、顔文字に現実社会の「臨場感」は皆無です。しかし、実際に遭っていなくても音声なら可能です。しかも、文字が登場する随分前、アフリカで猿の祖先と枝分かれした数百万年前から、私たちは声を使ってコミュニケーションしてきました。人のコミュニケーションの真骨頂は声にあります。

音声の未来にまつわる普通の話ならここで終わるのですが、井口さんと八木さんはさらに次の未来のお話をされています。以前にもお話に出ていたのですが、プログラムを「書く」という現在のテキストベース、HTMLベースのインターネットはまだまだ進化し続け、次に音声をも取り込んだシステムになるというお話です。「Hey!Siri!」というような音声認識の部分でなく、プログラミング入力やデータ保持・検索にも音声を取り込むというSFのような世界です。

そして今後、人はインターネット世界と常時接続されます。「視覚」はずっと使っているので目を接続ポイントにするわけにはいきません。人とインターネット世界を繋げる接続ポイントは(映画マトリックスのように脳に直接つなぐまでは)必然的に耳になります。人とコンピューターのやり取りは今以上に音声を使うことになるでしょう。DXやIoTの主役は音声の可能性が高いです。バーチャル空間と呼ばれるものがポリゴン的3DCGのようなものでは、WEB3とは程遠いものになります。現実と区別のつかないほど高画質な映像環境は一部ゲームや映画には登場していますが、それを滑らかに動かし没入感を再現することは今のコンピューターや通信環境では不可能です。しかし音声なら今の技術や環境でも可能です。音声を扱う技術や再現する技術(立体音響など)が増えれば、メディアやコミュニケーションにおいて音声が占める割合も増えるはずです。もしかしたら日本と違い、アメリカで絶好調のポッドキャストと音声CM界隈はテキストベースのインターネットから一足早く、次のステージへ移行中だからなのかもしれません。(そうだとすればアメリカでスマートスピーカーが普及したのも合点がいきます。日本であまり普及しないのは、FAXやフロッピーが現存するように、WEB2のどこかでIT化が止まっているからなのかもしれませんね。)


たった3本のポッドキャストながら、中身を文字に置き換えて整理すると意外と時間がかかります。ポッドキャストは数十分でも多くの情報が伝えられるんですね。新聞を丸ごと声に出して読みと20時間くらいかかるというのを思い出しました。また、中学生の頃にオールナイトニッポンをカセットテープに録音して何度も聞いていましたが、音声の場合も、本や映画と同じで、中身によっては何度も聴き直して楽しむこともできそうです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。



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